TFCC損傷

更新日: 2021.05.14

<TFCC損傷とは>
「TFCC損傷」は、正式には「三角繊維軟骨複合体損傷」といいます。
「TFCC損傷」は、手首の「三角繊維軟骨複合体」という部分に損傷がある状態を指し、強く手首を捻ったり、手首を打ったりした場合(テニスで腕を振る動作や、柔道の受身をとる動作をイメージしていただくとわかりやすいと思います。)に生じます。
手首の怪我と一口に言っても、「TFCC損傷」の原因はとても複雑です。
複雑になってしまう要因は、三角繊維軟骨複合体という組織自体の複雑さと、三角繊維軟骨複合体のある位置にあります。


三角繊維軟骨複合体の組織自体

三角繊維軟骨複合体は、「手の骨」と「手から肘までの骨」をつなぐ役割を持った組織で、複数の靭帯をひとくくりにまとめたときの総称です。
詳細な図示は割愛しますが、医師が患者さんお一人ごとの三角繊維軟骨複合体の損傷具合を、画像から詳細に把握するのは困難であるといわれています。それほど、三角繊維軟骨複合体は、複雑な組織といえるでしょう。

三角繊維軟骨複合体のある位置

三角繊維軟骨複合体は、「手の骨」と「手から肘までの骨」をつないでいます。
ここでは、「手の骨」は、第1から第5末節骨を先端にして、舟状骨や月状骨、三角骨を末端とする複数の骨をひとまとめに表現しています。
そして、「手から肘までの骨」は、親指側の太い骨である橈骨、小指側の細い骨である尺骨をひとまとめに表現しています。
三角繊維軟骨複合体は、主に、「手の骨」の中でも小指側の末端に位置する三角骨と、「手から肘までの骨」の中でも小指側の細い骨である尺骨をつないでいます。もっとも、「手の骨」の中でも、三角骨以外の一部の骨ともつながっていますし、「手から肘までの骨」の中でも、親指側の太い骨である橈骨とも一部つながっています。
このように、名称の異なる複数の骨とつながる位置に存在することが、三角繊維軟骨複合体が複雑だといわれる所以となっています。


このような三角繊維軟骨複合体という組織自体の複雑さと、三角繊維軟骨複合体のある位置の複雑さは、TFCC損傷を受傷された方の、「自分の痛みを理解してもらえない。」というご不満に直結します。私達は、痛みの全くない状態に戻らない方の、「自分の痛みを理解してもらえない。」というご不満を少しでも解消できるよう、適切な後遺障害等級の獲得と、その後の適切な損害賠償金の受領のために努めたいと考えています。

TFCC損傷の治療・手術

TFCC損傷の治療経過には、事故初期~中期~症状固定時期まで段階があります。このような段階を経るのに1年ほどかかるのが一般的です。

事故初期

まずは、「TFCC損傷」と診断される必要があります。事故初期の段階では、CTやMRIを撮って即座に「TFCC損傷」と診断がされることは多くありません。そのため、「TFCC損傷の疑い」や「手関節捻挫」、「手関節挫傷」などと診断されることもままありますが、事故初期の段階では、やむを得ません。重要なことは、他の部位の痛みを過度に気にして、手首の痛みの申告を忘れないようにすることです。

事故初期は、手首を動かさないよう固定することになります。もっとも、TFCC損傷は骨折ではないため、骨同士をボルトでつないだり、指を動かすのに不自由となるような固定をしたりはしません。取り外しが可能なギプスやサポーターなどで固定されます。

損害賠償の考え方からすると、いわゆる硬性装具で固定がなされ、日常生活や業務上の動作に支障をきたす場合の方が、サポーターのようないわゆる軟性装具で固定がなされている場合に比べ、通院期間中の慰謝料が高額になる傾向がありますので、骨折をして、ギプスでしっかり固定している方と比べると、若干軽傷とみられてしまうことがあります。

また、固定している状態のため、頻繁に通院することはありません。通院回数が少ないことは、通院の手間と労力が省けて良いことではあるのですが、損害賠償の観点から考えると、「通院回数が少ないということは、客観的にどのような症状が発現していたか明らかにならない。」として、通院期間中の慰謝料を軽視されてしまうことにもなりかねません。

このような自体に陥らないために、医師に指示されたとおりに自宅でも職場でもきちんと固定するということや、医師に指示されたとおりの頻度で診察を受けるということを意識するのが適切だと思います。

中期

「TFCC損傷」は、医師も診断が難しいといわれています。そのため、事故初期には、「TFCC損傷の疑い」や「手関節捻挫」、「手関節挫傷」など診断されていた方も、中期の段階で、「TFCC損傷」と断定されることがあります。

「TFCC損傷」との診断を受けた方に共通するのは、


①レントゲンで、尺骨(上記でいう「手から肘までの骨」の小指側です。)が橈骨よりも長く、三角繊維軟骨複合体が圧迫されていることが明らかになった


②レントゲンで、造影剤が三角繊維軟骨複合体から漏れ出していることが明らかとなった


③MRIで、三角繊維軟骨複合体の損傷が明らかになった


④内視鏡を挿入してモニターで関節内を診てもらった結果、三角繊維軟骨複合体の損傷が明らかになった


と、①~④のいずれか該当する項目があることです。

また、中期の段階では、手術を受けるかどうかの判断をする必要があります。

手術の内容は、大きく分けて2つです。尺骨(上記でいう「手から肘までの骨」の小指側です。)を短縮させ、三角繊維軟骨複合体への負担を軽減させる手術、もうひとつは、三角繊維軟骨複合体自体を縫い合わせたり、切除したりする手術です。

①の場合は前者、②~③の場合は後者の手術を選択することになるかと思います。

「手術を受けた方が良いか。」というご質問をいただくことがあるのですが、これは皆さんの価値判断次第です。うまく痛みと付き合っていけそうであれば、無理に手術をする必要はありません。しかし、少しでも痛みの軽減をと考えるのであれば、手術を受けるのも良いと思います。

後遺障害等級の認定傾向を考えると、手術を受けた方が、「手術を必要とするほど重傷であった。」というように客観的に捉えられ、等級の認定を得られるケースが多いように感じます。

症状固定時期

手術を受けた方は、数ヵ月後に症状固定に至るのが一般的です。
手術を受けていない方も、少しずつ動かしながらリハビリを続け、痛みの軽減が期待できなくなった時期に、症状固定に至ります。
症状固定時期には、後遺障害等級認定申請に必要な書類を準備します。その際には、上記①~④の結果だけでなく、さらに詳細に三角繊維軟骨複合体の組織の中でも、どの靭帯に断裂が認められるかなど、明らかになる資料を収集します。
加えて重要なのが、手関節を受傷した過程をきちんと説明した上で、後遺障害等級認定申請に望むことです。手首の受傷は、傍から見ると小さな衝撃でも、大変な疼痛を生じるものです。その分、事故の規模と受傷の程度にギャップが生まれやすいため、「このように転倒した。」、「○○に手をついた(強打した)。」など、きちんと受傷の過程を説明できるようにしましょう。

後遺障害等級認定基準と認定のポイント

「TFCC損傷」で考えられる等級は、

等級後遺障害
12級6号「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」
12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」
14級9号「局部に神経症状を残すもの」

となります。

12級6号「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」は、受傷していない手首の可動域と比べ、3/4以下に可動域が制限されている場合に認められる可能性があります。しかし、「TFCC損傷」の場合、痛みによって可動域が制限されるに留まり、骨の構造的変化が生じているわけでなないことや、橈骨(上記でいう「手から肘までの骨」の親指側です。)と「手の骨」の接合部に支障はないことなどを理由に、12級6号の認定は得られないことが多いです。

12級13号は、「TFCC損傷」と診断された方で、①~④のみならず、さらに詳細に三角繊維軟骨複合体の組織の中でも、どの靭帯に断裂が認められるなどの点を、十分に医学的に明らかにすることができた場合に、認められる可能性があります。「TFCC損傷」では、最も一般的な等級です。

14級9号は、①~④で「TFCC損傷」との断定がなされず、「TFCC損傷の疑い」に留まってしまった方や、①~④で「TFCC損傷」と断定されたにもかかわらず、さらに詳細に三角繊維軟骨複合体の組織の中でも、どの靭帯に断裂が認められるなどの点を、医学的に明らかにすることができなかった場合に、認められる可能性があります。

等級認定の有無、該当する等級、号によって、損害賠償金は大幅に異なります。実態に合った適切な等級が認定されるよう、「TFCC損傷」の原因を詳細に追究する必要があります。

損害賠償請求にあたって問題になる事項

「TFCC損傷」が生じるのは、手首です。日常生活においても、業務中であっても、手首を使うことがないという方はいらっしゃらないと思います。
しかし、「TFCC損傷」は、事故の規模と受傷の程度にギャップが生じやすいのに加え、後遺障害が残っても一応は手首が可動し、サポーター等の軟性装具での固定に留まることも多いため、受傷の程度と損害賠償額にもギャップが生じてしまいます。
また、認定された等級、号によって、「TFCC損傷」後の症状が、労働能力に影響を及ぼしうる期間が変わることがあります。
そのため、損害賠償請求にあたっては、普段どのような動作をするか、普段どのようなときに支障が生じるか、また、その支障はどのように収入に(主婦の方であれば家事に)影響を及ぼすかということを丁寧に説明する必要があります。

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