人身事故とは?物損事故との違いや請求できる賠償金も解説

更新日: 2021.04.17

交通事故に遭ったら、警察に通報する必要があります。警察は、交通事故を人身事故か物損事故かの分類に応じて処理します。
「人身事故に切り替えるのか、それともこのまま物損事故のままで進めるのか」
人身事故への切り替えの要否は、交通事故被害者の方からいただくよくあるご質問のひとつです。
ここでは、人身事故と物損事故の違いに触れながら、人身事故について、①相手に請求できる損害としていかなる費目(内容)があるのか、②損害の金額をどのようにして算定するのか、③どのような経緯・方法で請求するのか(どのような経緯・方法で示談交渉をするのか)、この3つの点についてご説明します。
人身事故と物損事故のどちらにしたらいいのか迷っているという方は是非参考にしてみてください。

そもそも人身事故とは

人身事故とは、人的損害(怪我や死亡)がある事故のことです。そして、人身事故にあたらない事故は物損事故といいます。しかし、損害の内容に応じた分類があるとはいえ、交通事故が発生した直後は損害の内容を精査することは難しいです。そのため、警察はまず物損事故(物件事故)として処理し、後日人身損害が判明した場合は、被害者からの申請により、人身事故へ切り替えるという流れを示すことが多いです。したがって、後に人的損害が判明したけれども被害者側が人身事故への切り替えの必要性を感じず、物損事故のままになっているという件も少なくありません。

以下、人身損害と物件損害について簡単に紹介していきます。

人身損害

人身損害とは、生命や身体についての損害のことをいいます。

交通事故被害者が人身損害として加害者に請求できる損害には、治療費、休業損害、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、逸失利益等があります。

物件損害

物件損害とは車両や車内にある携行品や積載物に係る損害のことを意味します。

物件損害として相手に請求できる損害としては、修理費、代車使用料、買替差額、買替諸費用等があります。

人身事故で加害者が負う「行政処分・刑事処分・民事処分」とは

人身事故と物損事故との違いの中に、各処分の内容が異なるというのがあります。

交通事故の加害者は、事故を起こした場合、行政・刑事・民事の3種類の責任を問われます。

一つ目の行政処分においては、免許の点数加算による免許停止処分と免許取消処分があります。

二つ目の刑事処分においては、自動車運転死傷行為処罰法や道路交通法等の法律によって懲役刑や罰金刑等の刑罰が科されることがあります。

そして最後の民事において、加害者は交通事故被害者に対して損害の賠償責任を負います。

この3点において以下でもう少し詳細を解説します。

行政処分とは

交通違反に対する行政処分には、免許停止処分と免許取消し処分があります。

免許停止処分とは、一定の期間免許の効力を停止する処分のことをいいます。

そのため、免許停止期間が過ぎれば免許の効力は復活します。

免許停止の期間は加算された点数の値により変動します。

免許取消し処分は、免許を取り消される処分のことをいい、ひとたび取り消されると、教習所に通うなどして再び免許を取り直す必要があります。

点数加算について

以上の行政処分は点数の加算により行われています。

以下で、交通事故の加害者の点数の加算を具体的に説明します。

交通事故による点数の加算は、交通事故が発生した日から起算して、過去3年間の点数を加算して計算します。

例外として、以下の4つのケースは、それ以前の点数が加算されません。

① 免許を受けているものが過去1年間の間無事故・無違反で過ごした時

② 運転免許の停止や取消し処分を受けて無事故・無違反で停止期間又は取消し期間を過ごした時

③ 免許を受けている者が軽微な違反行為(3点以下の交通違反)をし、過去2年間に違反行為をしたことがなくかつ、当該軽微な違反行為をした後3か月間違反行為をしたことがない時

④ 軽微な交通違反(3点以下の交通違反)を繰り返し、累積点数が6点になり、違反者講習を受講した時

はそれ以前の点数が加算されません。

人身事故の場合は、①基礎点数、②交通事故付加点数、③措置義務違反点数、の3つの点数の合計点数が加算されます。

a.基礎点数

基礎点数は、交通事故をおかしていた場合に加算されます。加算される点数は、交通違反の内容によって異なります。詳しくは、上の表のとおりです。

b.交通事故付加点数

交通事故付加点数は、死亡事故、重傷事故、軽傷事故といった交通事故の種類と違反者の責任の程度によって点数が異なります。詳しくは、下の表のとおりです。

交通事故の種類加害者の責任点数
死亡事故重い20
軽い13
重症事故(治療期間3ヵ月以上または後遺障害が存するもの)重い13
軽い9
重症事故(治療期間30日以上3ヵ月未満)重い9
軽い6
負傷事故(治療期間15日以上30日未満)重い6
軽い4
軽傷事故(治療期間15日未満)重い3
軽い2

c.措置義務違反点数

措置義務違反点数は、交通事故を起こしながら非人道的な行為をした場合に加算される点数です。ひき逃げや故意に事故を起こした場合などに加算されることになります。

刑事処分とは

交通事故や交通違反をおこした人は、その内容によっては、刑事上の責任を負うことがあります。

交通事故や交通違反に対する刑事上の責任とは、刑法、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(自動車運転処罰法)や道路交通法に規定されている刑事罰を科されることです。

刑事罰の内容としては、懲役刑と罰金刑があります。人身事故の場合、刑法や自動車運転処罰法による刑事罰が問われることになります。

警察は、人身事故として扱うことがきまると、実況見分を実施し、実況見分調書を作成します。実況見分調書の作成は、刑事上の違反事実を明らかにする場合や、違反にかかる証拠保全のために行われるため、実況見分調書は刑事処分を問うにあたって最も重要な資料であるといっても過言ではありません。実況見分の際は、原則は当事者双方立会いのうえ実施しますが、被害者側の立会いが難しい場合は加害者側のみの立会いで実施することもあります。

民事処分とは

交通事故の加害者が民事上負うのは、被害者に対し、被害者が被った損害の賠償責任です。これは、法律上定められているもので、民法709条及び自動車損害賠償保障法3条が根拠となります。

そして、加害者が賠償すべき対象は、損害の内容に応じて異なり、人身損害に対しては治療費、通院交通費、休業損害、後遺障害逸失利益、慰謝料等がその対象となり、物件損害に対しては、修理費用、代車使用料、買替差額、買替諸費用等がその対象となります。

交通事故で物損事故となった場合どうなるか

人身事故と物損事故の違いは、加害者側からみると特に行政・刑事の面で顕著です。しかし、被害者側からすると、いずれも大きな違いとは言い難いです。

人身事故か人身事故かが被害者に対して大きな影響を及ぼすのは、事故態様に関する証拠が必要な場合です。人身事故取扱いとなっている場合、先ほど刑事処分のところで言及したとおり、警察が実況見分調書を作成します。これに事故態様が詳しく記されているため、過失争いの際に有力な証拠となり得ます。他方で、物損事故取扱いの場合、警察は実況見分を実施しません。物件事故報告書という報告書を作成するにとどまります。もちろん、人身損害がいない事件で実況見分を行ってほしいがために人身事故扱いにするということはできないのです。しかし、人身損害があり、なおかつ過失について争いが生じている交通事故被害者の方は、物損事故のままにせず人身事故へと切り替えた方がいいということも少なくありません。

加害者が物損事故にしたい理由は

交通事故被害者の方が、加害者側から「人身事故にしないでほしい」といわれることがあります。これは主に行政上・刑事上の理由によるものです。

まず、行政上の問題においては、人身事故の場合、交通違反による加算のほか、交通事故付加点数及び措置義務違反点数が加算されるのに対して、物損事故の場合は交通違反による加算のみがされます。したがって、人身事故より物損事故のほうが、加算される点数が低くなります。だから加害者は人身事故にして欲しくないのです。

また、刑事においては、物損事故の場合、道路交通法による刑事罰のみが問われるため、人身事故に比べると、加害者が負う責任は軽くなります。したがって、刑事上の責任という観点からも、加害者は物損事故として扱ってほしいと考えます。

しかし、交通事故は、人身損害があるのであれば人身事故とするというのが大原則となります。ご自身の賠償のことを考えるのであれば、制度どおりの処理を選択することをお勧めします。

物損事故から人身事故に切り替える方法とは

① 診断書の取得

まず人身事故へ切り替えるためには、人身損害があることの裏づけとして、交通事故による受傷があるという医師の診断が必要です。したがって、医師が作成した診断書を警察署へ提出しなければなりません。通常は交通事故の直後にかかった病院の初診の診断書をもらい、提出します。しかし、稀に初診時の病院からは診断書を取り付けることができない場合があります。その場合は、現在通院している病院に診断書の作成をお願いすることになります。

② 警察署に人身切り替えを申請

診断書を入手したら、その交通事故を管轄している所轄の警察署に行き、人身切り替えの申請書と一緒に提出します。その際、あらかじめ何の用件で警察署にいくのかを連絡しておくと、警察署に行った際に手続きをスムーズに進めることができます。

なお、警察署のホームページには加害者とともに警察署に行って人身切り替えの申請をしてくださいという記載がありますが、一人で行って申請しても問題はありません。

物損事故から人身事故に切り替えた場合、実況見分を実施することになります。実況見分には被害者が立ち会うことができますので、都合を合わせて実況見分に立ち会い、事故当時の記憶のとおり、事故について捜査官に説明する必要があります。

人身事故切り替えは早期にしましょう

人身事故への切り替えの期限は特に決められていません。しかし、交通事故発生日からあまりにも時間が経過してしまうと交通事故と怪我との関係性を裏付けることが難しくなります。そのため、警察に人身事故切り替えを申請しても、因果関係が不明であることを理由に人身事故切り替えを断られてしまう可能性があります。人身事故への切り替えを行う場合は、早めに手続きを進めることをお勧めします。

人身事故切り替えを警察に断られてしまったら

人身損害が生じていたけれども人身事故へ切り替えられなかった、事情があって人身事故へ切り替えなかったという方の場合は、自賠責保険へ「人身事故証明書入手不能理由書」という書面を提出する必要があります。そうすることで、自賠責保険から人身事故と同じ補償を受けることができます。入手不能理由書には、なぜ人身事故にしなかったのかという理由を記載する必要があります。ここで注意するべきは、入手不能理由書は、自賠責保険へ提出するものではありますが、加害者側の任意保険会社の目にも触れる書面であるという点です。そのため、実態と異なるのであれば、受傷が軽微であった等の記載をするべきではありません。

人身事故で請求できる慰謝料

交通事故によって怪我を負った場合、相手方に請求できる項目に「慰謝料」というものがあります。慰謝料とは、精神的な苦痛に対する損害賠償のことで、交通事故の場合は事故による受傷で被害者が精神的に辛い思いをしたことに対しての賠償と考えられています。

慰謝料には、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類あります。これらの詳細については後ほど解説します。

賠償金の種類

交通事故被害に遭った場合、加害者へ請求できるのは慰謝料だけではありません。

慰謝料以外の損害で加害者へ請求できるものは、大きくわけると物に関する損害(物的損害)と、人に関するもの(人的損害)とがあります。

物的損害の代表的なものは車両ですが、それだけではなく衣服など事故に遭ったときに身につけていたもの(着衣・携行品)なども損害に含まれます。

人的損害は、怪我を負ったことによって生じた損害で、治療費だけでなく、通院にかかった交通費、休業損害、付添い費、入院雑費、診断書の文書料等があります。

請求できるものは、被害者の方のご状況によって異なります。ご自身の場合は何を請求できるのかを知りたいという方は、弁護士へご相談いただくことをお勧めします。

また、加害者側の保険会社は、被害者が実際にその費用を負担していることの証明として領収書の原本を要求します。そのため、基本的に交通事故に関する出費の領収書は保管しておくことをお勧めします。

慰謝料の算出方法

慰謝料には、上述したとおり、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料の3種類があります。それぞれ算定方法を以下に解説します。

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、交通事故で負った傷害の治療によって被った精神的苦痛に対する慰謝料です。

①自賠責基準

自賠責保険の慰謝料の計算方法は、以下の計算式によって求めます。

もっとも、自賠責保険には治療費や休業損害等の他の支払いを含めて総額120万円という上限があります。したがって、治療費等が120万円に近づくほど、慰謝料として支払われる額は少なくなります。

1日あたり4300円(※1×通院日数×2(※2

※1 2020年3月31日以前発生事故の場合は4200円
※2 通院日数×2が総期間に対応する日数を超える場合は総期間にて計算
例)実通院日数10日、総期間30日の場合:10×2=20 →20日で計算
 実通院日数18日、総期間30日の場合:18×2=36 →30日で計算

②裁判基準(弁護士基準)

裁判基準は、交通事故の裁判例の蓄積の中で生まれた基準です。弁護士が用いるため、弁護士基準と呼ばれることもあります。

裁判基準の入通院慰謝料は、以下の別表Ⅰ、別表Ⅱという表を使って計算します。原則は別表Ⅰを使いますが、ムチウチで他覚所見がない場合等は別表Ⅱを用います。

入院の場合は横軸、通院の場合は縦軸で、それぞれ対応する枠内に書かれた数字が金額(万円単位)に基づいて計算をします。たとえば、別表Ⅰのケースで1か月通院した場合の慰謝料は、28万円です。

もっとも、計算方法は、入院と通院の両方がある場合や実日数が少ない場合等、各種の決まりごとがあるうえに、事故態様によっては過失割合も影響するためやや複雑です。ご自身の裁判基準の入通院慰謝料を把握したいという方は弁護士にご相談ください。

入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月13月14月15月
通院B \ A53101145184217244266284297306314321328334340
1月2877122162199228252274291303311318325332336342
2月5298139177210236260281297308315322329334338334
3月73115154188218244267287302312319326331336340346
4月90130165196226251273292306316323328333338342348
5月105141173204233257278296310320325330335340344350
6月116149181211239262282300314322327332337342346
7月124157188217244266286304316324329334339344
8月132164194222248270290306318326331336341
9月139170199226252274292308320328333338
10月145175203230256276294310322330335
11月150179207234258278296312324332
12月154183211236260280298314326
13月158187213238262282300316
14月162189215240264284302
15月164191217242266286
(別表Ⅰ)
入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月13月14月15月
通院B’ \ A’356692116135152165176186195204211218223228
1月195283106128145160171182190199206212219224229
2月366997118138153166177186194201207213220225230
3月5383109128146159172181190196202208214221226231
4月6795119136152165176185192197203209215222227232
5月79105127142158169180187193198204210216223228233
6月89113133148162173182188194199205211217224229
7月97119139152166175183189195200206212218225
8月103125143156168176184190196201207213219
9月109129147158169177185191197202208214
10月113133149159170178186192198203209
11月117135150160171179187193199204
12月119136151161172180188194200
13月120137152162173181189195
14月121138153163174182190
15月122139154164175183
(別表Ⅱ)

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは後遺障害を負ってしまったことに対する慰謝料です。

後遺障害慰謝料にも自賠責基準と裁判基準があります。

①自賠責保険基準

自賠責保険基準で支払われる後遺障害慰謝料は、以下の通りです。

第1級第2級第3級第4級第5級第6級第7級
1150万998万861万737万618万512万419万
第8級第9級第10級第11級第12級第13級第14級
331万249万190万136万94万57万32万

最も重いとされる第1級の症状には、例えば両目の失明などがありますが、自賠責保険基準では1150万円が支払われることになります。果たして苦痛に見合った金額と言えるでしょうか。

②裁判基準

裁判基準で支払われる後遺障害慰謝料は、以下の通りです。

第1級第2級第3級第4級第5級第6級第7級
2800万2370万1990万1670万1400万1180万1000万
第8級第9級第10級第11級第12級第13級第14級
830万690万550万420万290万180万110万

最も等級の低い14級でも、自賠責保険基準と裁判基準では、金額は大きく異なります。

死亡慰謝料

死亡慰謝料とは、交通事故被害者が死亡した場合に支払われる慰謝料です。被害者本人に対して支払われる慰謝料とは別に、被害者が亡くなった精神的苦痛に対して遺族に支払われる慰謝料の2つの要素があります。

ここでいう遺族とは、相続人の限りではありません。確かに本人に対する慰謝料の受け取りは相続人がすることになりますが、被害者が亡くなったことに対して精神的苦痛を負うのは相続人だけでは無いからです。例えば、被害者が未成年であった場合、相続人は親権者ですが、遺族には兄弟姉妹や祖父母等も含まれます。金額は被害者が子であった場合の父母と比べるとやや下がることが多いようですが、実際に兄弟姉妹・祖父母に対して慰謝料の支払いが認められた事例もあります。

遺族の中で慰謝料を請求できる人のことを請求者と呼び、遺族のどこまでを請求者とするかはそれぞれの基準によって異なります。

各基準の算出額を詳しく説明します。なお、任意保険基準に関しては計算式が公表されていないため説明を省略しています。

①自賠責保険基準

自賠責保険基準での死亡慰謝料は、本人に対する慰謝料は一律400万円(※2020年3月31日以前発生の事故は350万円)となっています。

遺族に対する慰謝料は、

a.請求者が1名の場合は、本人への慰謝料に加えて550万円
b.請求者が2名の場合は、本人への慰謝料に加えて650万円
c.請求者が3名以上の場合は、本人への慰謝料に加えて750万円

と請求者の人数によって支払われる金額が異なります。

被害者に扶養家族がいた場合は、上記金額に200万円が加算されます。なお、自賠責保険基準での請求者は被害者の父母、配偶者、子供となっています。

例えば4人家族の父親が亡くなった場合、請求者は最大で被害者の父母、義父母、配偶者、子供2名の計7名です。本人慰謝料が400万、遺族慰謝料は請求者が3名以上のため750万、配偶者・子供が扶養家族の場合はさらに200万円が加算され、合計1350万円が支払われることになります。

ここだけ見ると算出額が低いとされる自賠責保険基準でも意外と支払われる、という印象を受けるかもしれません。しかし、自賠責保険基準では被害者の家庭内での役割は考慮されません。前述の4人家族を再度例に挙げると、この家族の場合、一家の経済的支柱が亡くなったことになります。しかし本人に対して支払われる死亡慰謝料は一律の400万円です。一家にとって父親を亡くすことは、精神的にはもちろん経済的にも大きな損失です。であるにも関わらず、その損失が考慮されないことは遺族にとって納得できるものではありません。

②裁判基準

裁判基準では自賠責保険基準とは違い、被害者の家族構成や家庭内での役割によって算出額が異なります。前述の書籍『損害賠償額算定基準』に公表されている本人慰謝料の基準額は以下の通りです。

a.一家の支柱である場合は、2800万円
b.母親もしくは配偶者の場合は、2500万円
c.その他(※)の場合は2000万~2500万円
※その他には独身の男女、子供、幼児等が含まれる。

もちろん具体的な考慮事由によっては必ずしも支払われるものではありませんが、本人に対する慰謝料だけでも、自賠責保険基準と比べて遥かに高額であることが分かります。

遺族に対する慰謝料は、被害者と遺族の関係性といった個人の事情によって主張する金額に変動があります。そのため一概にいくらとは言い切れませんが、おおよその相場は被害者の配偶者の場合で200万~400万円程度、それ以外の近親者(子・兄弟姉妹・祖父母等)の場合で100万~200万円程度です。この金額が認められれば、本人に対する慰謝料に加算して支払われることになります。

家族を亡くした喪失感は金額で補填できるものではありませんが、自賠責保険基準の算出額では、被害者本人や遺族の事情が反映されていないことは明らかです。より実状にそった慰謝料を請求したい場合は弁護士へご相談ください。

慰謝料の請求方法

適切な賠償を受けるためには、ただ示談交渉を頑張ればいいというものではありません。慰謝料は受傷によって被った精神的苦痛に対する賠償であり、それが客観的にわかる必要があるため、事前の備えが肝心です。

特に、通院を始めたばかりの方は、ご自身が後遺障害に該当するような症状なのかそうではないのかを自身で把握することは容易ではありません。いざ後遺障害が残った場合に困ることがないよう、治療初期段階から万が一の場合を意識して備えておくことが大切です。

以下で各段階のポイントについて解説します。

通院

慰謝料の算定においては、医師が作成する診断書や診療報酬明細書等が間接的な証拠となることから、通院が大切です。

また、痛みなどの神経症状を原因とする受傷(むちうち等)の場合は通院の頻度も大切となります。なぜならば、通院の頻度は被害者がどれだけ傷みを感じていたのかを間接的に疎明する事実となるからです。さらに、裁判基準の慰謝料の算定方法において、特定の要件に満たす方の場合に月10回以上の通院をしているか否かで計算式が異なるケースがあります。

したがって、月10回、1週間あたりにすると週2~3回程度の通院を医師が必要だと考えている範囲で継続することがひとつの目安となります。

もっとも、交通事故賠償においては必要性・相当性という概念があるため、やみくもにたくさん通えばいいというものではありません。加えて、治療費が嵩むと自賠責保険の上限である120万円に達してすることが早まり、120万円に達しそうな場合、加害者側の保険会社は治療費の内払いを打切ってくることがあるため注意が必要です。

さらに、後に後遺障害となる可能性を考えると、通院を途中で止めたりしないこと、医師に自覚症状を正確に伝えること、医師の指示にしたがった服薬を継続することが大切になります。なぜならば、神経症状での後遺障害等級の認定にあたっては、交通事故発生から症状固定までの症状の「連続性・一貫性」が判断のポイントとなるためです。被害者が医師に何を訴えていたか、どの程度の頻度で病院に通っていたか、どのような薬を処方されていたか等の事実が反映された資料、具体的には、診断書や診療報酬明細書等が被害者に自覚症状が連続して存在していたことを客観的に把握するための有力な証拠となります。

また、後遺障害等級の調査にあたっては当然ですが医師の見解が重要視されます。そのため、整形外科への通院が重要となります。むちうちの場合、「電気治療やマッサージの方が楽になる」「夜遅くまでやっているから働きながらでも通いやすい」等の理由から、整形外科よりも整骨院や接骨院をメインで通っている被害者の方は多いです。もちろん、整骨院や接骨院に通うこと自体は問題ないことです。しかし、後遺障害等級認定のためには、整形外科へ通院することを疎かにしないように気をつけていただく必要があります。

後遺障害等級認定申請

一定程度治療を継続しても症状が残っている場合は、後遺障害に該当する可能性があります。その場合は、自賠責保険へ後遺障害等級認定申請を行う必要があります。

一定程度をどのくらいの期間とするかは傷病によって異なります。交通事故でもっとも多いむちうちの場合はだいたい6か月を目安とします。

後遺障害診断書の作成

後遺障害診断書は、後遺障害等級認定にあたって最も重要な書類です。後遺障害診断書は医師に作成してもらうことになります。

症状固定日に医師の診察を受け、その時点での症状等について後遺障害診断書に記してもらうことになります。記載事項は、傷病名によって異なります。

たとえばむちうちの場合、①自覚症状、②画像所見、③神経学的検査の3点の整合性が後遺障害等級の認定にあたってのポイントとなっているとされています。

後遺障害申請

後遺障害申請は、加害者側の自賠責保険に対しておこないます。

自賠責保険に提出された申請書類は、自賠責保険で提出書類の不備がないかを確認された後、損保料率機構(損害保険料率算出機構)という機関へ回付されます。損保料率機構は、自賠責保険による適正な保険料の支払いを担保することを目的とした機関で、自賠責保険の支払いの算定に関する調査全般を公正かつ中立な立場で行います。損保料率機構は、後遺障害に関する調査を行い、その調査結果を自賠責保険へ通知します。自賠責保険へ申請を行ってから結果の通知を受けるまでにかかる期間は、申請内容によって異なりますが、だいたい1~3か月程度です。

示談交渉

加害者側の任意保険会社は、治療が終了し後遺障害等級が確定すると、その任意保険会社の基準にしたがって計算した金額をもとに示談を提案してきます。しかし、この金額はその任意保険会社独自の基準です。これまでに上述した裁判基準ではないということを念頭においていただきたいです。

たとえば、任意保険会社が提案してくる金額には以下の傾向があります。

・入通院慰謝料

1日4300円(または4200円)という数字が書いてある場合は、自賠責基準です。裁判基準に計算しなおすことによって増額をはかることができる可能性が高いです。

・後遺障害慰謝料、逸失利益

多くの保険会社は、後遺障害慰謝料と逸失利益を合算で記載しています。またその項目の名称は「後遺障害に関する慰謝料」などの記載であることが多いです。

弁護士に相談するメリット

弁護士に相談することのメリットは、ひとくちにいうと示談金が増額するからです。そして、弁護士に依頼すると賠償額が増額することにはちゃんとした理由があります。

まず、保険会社は、交通事故被害者に示談金を提示する際、弁護士が用いる裁判基準より低い基準を用いて算定していること、そこを裁判基準へ引きなおすことで賠償額が増額することはここまでで解説してきたとおりです。では、交通事故被害者ご自身が裁判基準で相手方保険会社に対し交渉を行えば良いのではないかと考える方もいらっしゃると思います。しかし、交通事故被害者の方ご本人が裁判基準の金額を相手方保険会社へ提示しても増額をはかることが難しいことが少なくありません。なぜならば、保険会社は被保険者の毎月の保険料で運営されている営利組織であるため、安易に自社の基準を崩すことには応じないからです。

他方で、弁護士が交渉を行っている場合、弁護士は交渉による解決がはかれないとなると、実際に裁判を行うことを視野にいれてきます。したがって、相手が弁護士の場合は、保険会社側にも裁判になった場合の結果も想定しつつ示談交渉を行う必要が生じてくるというわけです。

もちろん、弁護士に依頼するとなると弁護士費用が発生します。しかし、ご加入中の自動車保険等に弁護士費用特約が付保している場合は、特約先の保険会社が費用を限度額の範囲で支払ってくれるため、被害者の方の負担にならないことが多いです。

さらに、弁護士費用特約のない方でも、弁護士費用は弁護士に依頼することによって増額した金額の一部に納まり、弁護士費用を考慮したうえでもメリットが期待できるケースが多いです。

ご自身の場合はどうだろうと思われた方は、一度弁護士までご相談ください。

まとめ

人身事故についてご理解いただけたでしょうか。

人身事故にするのか物損事故にするのかは、交通事故被害者の方のほとんどが通る道です。物の損害のみの事故と比べると人身事故は相手方に請求する項目が多いうえに、治療の経過によってはとるべき手続きも増えてくるため、交通事故被害者の方が調べながら進めていくのは非常に大変なことです。ここを読んでご自身の場合はどうしようと思われた方は是非一度ご相談ください。

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